変形性膝関節症

初期は膝にこわばりを感じることが多く、長く正座やあぐらをかいた後に立ち上がった際の痛み、膝が伸び難いことなどを訴えます。
痛みは膝関節の内側、あるいは膝のおさら周辺にあり、膝裏に緊張感を訴えるものもあります。
病期が進行するにしたがって動作中の痛みを訴えるようになり、階段や坂道の昇降時にも痛みを感じ、さらに平地歩行にも支障を生じるようになります。
滑膜の炎症・増殖による滑膜炎が起こると関節に水がたまる「関節水腫」となり、腫脹・圧迫感を訴えます。
さらに関節軟骨や半月板の変性・摩耗が進むと、関節を動かしたときにコリコリ、ガリガリといった軋轢音が出てきます。日本人では大多数が関節の内側の変形が強いため、O脚になる傾向があります。

原因
変形性膝関節症の病因は一次性と二次性に分けられます。
先天異常・代謝性疾患・外傷など明確な原因があるものは二次性に分類されます。
一般的に多いのは一次性のもので、60歳前後の女性が、誘因なく膝の痛みや運動障害、膝に水が溜まるなどの症状を訴えます。このように明らかな原因が認められない場合は一次性に分類されます。
加齢による関節の老化や筋力・代謝の低下で、骨と骨の隙間がだんだん狭くなり、やがては、骨と骨がこすれ合うようになります。
関節軟骨には神経がないので、摩擦による痛みはありませんが、周りの組織(靱帯や関節包)が次第に刺激され痛みを起こし、長い年月をかけて症状が進んでいきます。

治療法…一般的に手術療法よりも、まずは保存療法を行う傾向があります。
保存療法では膝関節の危険因子や手術所見を十分に認識した上で指導をうけると、変形の自然経過を遅らせ、症状を軽減させることに効果的です。
痛みを抑えるために消炎鎮痛薬を投与するなどは勿論有用ですが同時に正座を避ける、杖を突くなどの日常生活での意識改善が大切です。
次いで、積極的に膝周辺の筋力強化をはかります。(下記のホームケアで説明)
適度な運動(ストレッチ、筋力の強化、姿勢訓練など)によって軟骨組織を健康な状態に維持し、関節可動域を広げ安定させることで、関節が外部からの衝撃を吸収できるようになります。ただし間違ったトレーニングをすると悪化することがありますので注意が必要です。また、痛みがひどいときは関節を休ませるべきですが、逆に何も運動をしないと変形性関節症は改善するどころかより悪化するという傾向があります。
無理はせず、自分の状態をきちんと把握し正しい運動を行いましょう。
なお、関節の安定化や痛みの軽減の為にサポーターや足底板等を作るのもよいでしょう。関節の向きや、荷重を正しい位置にしてから運動を行うと、より効果が期待できます。
保存療法の中で理学療法としては、温熱療法が有用な場合があります。熱によってこわばりや筋肉の機能を改善し、痛みの域値を変化させます。コキシブ系薬剤やヒアルロン酸(正常な関節液に含まれる成分)を関節に注射する治療は、長期にわたってこの病気を患っている人の一部で、痛みを和らげる効果を示しています。保存的治療が期待できない場合は手術療法を検討します。高位脛骨(こういけいこつ)骨切り術は、まだ変形を起こしていない関節面が残っている場合に行います。変形が重度である場合は、人工関節全置換術(ぜんちかんじゅつ)の対象になります。これらの手術では疼痛は明らかに改善しますが、術後の合併症である血栓症による肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞の発生に十分注意を払う必要があります。また数種類の栄養補助食品(グルコサミンやコンドロイチン硫酸など)を摂取することにより個人差はありますが痛みが軽減する場合もあるようです。

ホームケア…

仰向けで膝関節を十分に伸展させたまま、下肢全体を重力に抗して挙上させ内回し・外回しと動かします。
逆の膝は曲げて立てておきましょう。
内・外10回ずつを1セットとして1日3セット程行って下さい。

仰向けで膝裏にマクラやクッションを置き、軽く膝関節が曲がった状態にします。その状態から膝を伸展させるようにマクラを5秒間押しつけます。その際踵が床面から離れないように注意して下さい。
5秒間を1回とし、5回で1セット1日3セット程行って下さい。

*必ず専門家の先生に相談してからおこなって下さい。