アキレス腱周囲炎

アキレス腱は人体で最大の腱です。アキレス腱は腓腹筋とヒラメ筋が合体したもので、踵骨の後方に付着しています。アキレス腱炎とは、アキレス腱自体が微細な部分断裂によって炎症を起こした状態を言います。アキレス腱周囲炎とは、アキレス腱周囲の結合組織(パラテノン)が炎症を起こした状態を言います。アキレス腱滑液包炎(アキレス腱付着部炎)とは、アキレス腱付着部周辺にある滑液包が炎症を起こした状態を言います。これらの病態メカニズムは多少の違いがあるものの、症状や治療についてはほぼ同様です。
症状は痛みや腫れです。中には、痛みのために足首の運動障害や歩行障害を認める症例も経験します。診察ではアキレス腱の肥厚や圧痛、足首の運動制限などを認めます。レントゲン検査では特徴的な異常所見はありません。時に、アキレス腱の肥厚(CR軟部組織撮影)やアキレス腱付着部の骨棘(骨のとげ)を認めることもあります。

原因
スポーツ活動や長時間の作業による慢性的なアキレス腱への刺激や間違った靴選びによって発生すると考えられています。アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎は、使いすぎ症候群(over use)と考えられています。アキレス腱だけではないのですが、力学的負荷は牽引・圧迫・剪断の3つの負荷が複合的に起こっていると考えられます。ジャンプや着地・ダッシュ・急激な方向転換などの動作の繰り返しによりアキレス腱への負担が繰り返しかかる事により炎症を起こすと考えられています。
筋肉や腱に炎症を起こす事は、スポーツを行っていると多くあります。その中でも多い部位がアキレス腱や膝の膝蓋骨腱などです。バスケットボールや陸上の短距離走・跳躍種目などに多いのがアキレス腱炎・アキレス腱周囲炎です。アキレス腱炎は、アキレス腱自体に炎症を起こし、変性や部分断裂を起こしているものです。

治療法…
保存的治療が原則です。まず、誘因となったスポーツ活動を一時中止し、薬物療法として短期間の非ステロイド系抗炎症剤を処方し、リハビリテーションとして温熱療法やストレッチング、筋力強化訓練を指導します。再発を繰り返す症例ではアキレス腱にかかる負担を軽減する目的にて足底板の装着を勧めます。炎症を抑えるために非ステロイド系消炎鎮痛剤を服用することやブロック注射することがあります。しかし、ブロック注射の場合ステロイド剤によりアキレス腱が変性することや虚弱化を招く危険性が指摘されています。その他にも、「一度使用すると頻繁にブロック注射に頼るようになる事」や「慢性腱症へのステロイド注射は臨床的に有用性は実証されていない」などの研究が発表され、最近では積極的な使用は避けられているようです。