頸部が側方に屈曲した状態をいい、いろいろな原因で起こるが、先天性のものと後天性のものに大別される。先天性筋性斜頸は代表的なもので、胸鎖乳突筋の疾患や先天性骨性斜頸は頸椎の楔状椎などによるものである。後天性のものとしてはリンパ性斜頸、痙性斜頸などがある。
先天性筋性斜頸は代表的なもので、胸鎖乳突筋の疾患である。
新生児の一側の胸鎖乳突筋の分岐部に腫瘤があり、これが生後3~4週ごろまで大きくなって斜頸位をとるようになる。その後、腫瘤はだんだんと縮小して生後1年以内に斜頸は自然治癒するものが多い。できるだけ斜頸位を矯正して患児を寝かせておくことが、頭蓋や顔面の不均整の発生を防止するために必要である。自然治癒しない一部のものでは、胸鎖乳突筋が短縮して緊張し、斜頸位が高度になってくるので、生後1~2年ごろに観血的手術が必要である。手術をしないと、成長するにしたがって、斜頸はもちろんのこと、頭蓋や顔面の変形が高度になってくる。このほか、先天性骨性斜頸は頸椎の楔状椎などによるものである。
後天性のものとしてはリンパ性斜頸がある。扁桃炎や中耳炎などのため、頸部の深部リンパ節が炎症をおこして斜頸位をとるもので、幼小児にみられる。リンパ炎が治ると、斜頸位も消失する。そのほか、側頸部の広範囲な皮膚瘢痕による瘢痕性斜頸、頸椎の炎症性疾患による骨関節性斜頸、斜頸位運動を繰り返す痙性斜頸などがあり、症候性としての眼性斜頸や耳性斜頸もある。このうちで痙性斜頸は特異な斜頸で、人前に出たり精神興奮のある場合に著しくなる。心因性のものもあるとされており、精神療法で軽快するものもあり、また自然に緩解するものもある。
症状
両親が患児の頸部腫瘤に気づくことが最初のこともありますし、頸部の側屈あるいは回旋制限によって気づくこともあります。また、頸部の可動域は患側(悪いほう)の顔面への回旋が制限され、常時顔は健側(良い側)を向いています。一方、側屈は患側へ傾く方向で、健側には動く範囲の制限がみられます。
これらの症状が学童期まで続くと、顔面の形状に左右非対称が現れることがあります
原因
斜頸とは、頭と首が側方に傾いてしまう状態です。筋性斜頸は全新生児の0・08~1・9%にみられ、骨盤位分娩(いわゆる逆子)や難産で吸引分娩を受けた赤ちゃんにおける発生頻度が高く分娩時の外傷が原因とも考えられます。しかし、自然分娩や帝王切開の赤ちゃんにも筋性斜頚が現れることから必ずしも原因とは断定できません。
頸部(首)の前面を斜めに走る胸鎖乳突筋の筋線維内に結合組織の増殖が起こり、次第に増生して緊張が強くなります。そのため、患児の頭部および顔面は悪いほうに傾き、良い方に回旋することになります。
治療法…以前は徒手矯正マッサージを行ったが、近年はむしろ有害であるということで行われていません。乳児期には経過観察が原則であり、特別の検査や治療はしません。多くの場合、1歳ころまでには症状が自然に治癒ないし軽快することが期待できるからです。斜頸位を矯正して患児を寝かせておくことにより、頭蓋や顔面の不均整の発生の防止になります。しかしそれ以降も斜頸が残る場合には、胸鎖乳突筋が短縮して緊張し、斜頸位が高度になってくるので、幼児期(3歳前後)に観血的手術(胸鎖乳突筋切腱術など)が行われます。