半月板損傷

半月板は膝内部の内側と外側に1枚ずつあります。大腿骨と脛骨からなる関節面に介在して膝の動きをスムーズにしたり、膝関節の動き(屈曲・伸展、内旋・外旋)に際して膝関節を安定させたりするとともに、ジャンプなどの衝撃を分散させるクッション的な役割(衝撃吸収)を果たしています。この半月板が、スポーツ活動などによって膝をひねったときにストレスでこすれて損傷(断裂)することがあります。半月板を損傷すると膝関節の疼痛や運動制限が発生します。

症状
痛み、関節水症、関節の可動域の制限が主な症状です。痛みは慢性期になると運動時痛、歩行時痛、立ち上がり時などの痛みがでますが、一番激しい痛みは嵌頓(かんとん)時の痛みです。この嵌頓とは断裂した半月の断裂片が大腿骨顆を乗り越えて顆間窩(かかんか)まで転位し、はさまりこんだ状態になります。この状態では膝は屈曲できますが伸展は30°以下しかできず、膝を動かそうとすると激痛が生じます。またこの状態が続くと関節水症になることがあり、変性半月板損傷では、この水症を多く生じるのが特徴です。関節の可動域制限は伸ばせないことがほとんどで、バケツ柄状損傷や円板状半月板で生じることが多くなっています。
理学的所見では、内側半月板損傷では内側の関節の間に、外側半月板損傷では外側の関節の間に自発痛、圧痛があり、慢性例では大腿四頭筋の萎縮を認めます。
急性症状、つまり“ガツン”と1回の急激なストレスによって受傷したばかりのときは、疼痛が主症状であり、いわゆる奥歯に物が挟まったような痛みや、膝を伸ばすときに一瞬引っかかるような違和感(キャッチング)が常にあります。断裂部位が大きく、関節内に半月板の一部が嵌入〈かんにゅう〉(はまる)したケースでは、関節がある角度から伸展できない状態(ロッキング症状)となり、激痛及び可動域制限が起こり、歩行ができなくなるケースもあります(写真2)。半月板の損傷部位に一致して膝関節部に圧痛及び運動時痛があります。膝関節を屈曲―伸展しひねりを加える手技(McMurray test)で痛みを生じます。内側半月板損傷のほうが、外側半月板損傷より5倍も多く発生しています。
慢性化すると関節炎が起こります。膝関節に水や血がたまる水腫や血腫を合併します。さらに長期化すると、患側を無意識でかばうために大腿四頭筋が萎縮してきます。さらにひどくなると、断裂した半月板がめくれて大腿骨や脛骨の関節の軟骨を傷つけ、骨を変形させる(変形性膝関節症)原因にもなります。
一般的に内側半月板の方が外側半月板よりも傷害の件数が多いと言われています。
これは内側半月板の方が、脛骨に固く着いているとか、外反傷害(外側から内側に向かう力によって起こる傷害)のほうが多いからだとか言う人もいます。この場合、内側靭帯と前十字靭帯を伴う事が多くあります。ですから、膝の検査をする場合、靭帯だけ、半月板だけでなく、大きなビジョンをもって両方の検査と膝関節全体の検査を忘れてはいけません。
半月板損傷は縦、横、斜めいずれの方向にも損傷の可能性があります。外側に近いほど(外側三分の一)血流が多いため怪我をした後、膝にかかる負担を最小限にとどめ、鍼灸を行うことによって手術をしなくても治癒する可能性が高いと言えます。
半月板損傷の一番代表的な症状は膝がロックする事です。膝が固まってしまって伸ばす事も曲げる事も難しくなります。そのほかに、膝が崩れそうな感覚、スクワットが困難になる、関節部の痛み、腫れ、時に筋肉の減少などでしょう。
膝が10-30度の屈曲でロックする場合、内側半月板損傷が見られ、70度以上の場合、外側半月板損傷が見られる場合が多くあります。もし膝の不快感、ロックなどになかなか治る徴候が見られない場合、内視鏡による損傷部分の除去手術を行うことになります。膝がロックしない場合でもMRIや内視鏡の検査を行う場合もあります。

原因
膝関節に異常な屈曲、回旋力が働いた時に、大腿骨、脛骨関節接触面の生理的な軌道がずれ、半月板の一部が関節接触面の間にはさみ込まれることがあります。この時に半月板内に引き違い応力が働き、半月板は断裂するか、関節包から剥離します。そして損傷の形態から縦断裂(長くなるとバケツ柄状断裂)、横断裂、水平断裂、それらの組み合わさっているもの、変性断裂などに分類されます。また原因として外傷性、半月板変性によるもの、先天性の円板状半月によるものがあります。
外傷性では以前は労働災害によるものが多くみられましたが、最近はサッカー、ラグビー、柔道などのスポーツによるものが増えています。また前十字靭帯損傷と合併することが多くみられます。そのため同時に損傷する場合と、前十字靭帯損傷後の膝の不安定性のため2次的に起こる場合があります。
変性によるものは内側半月板に多く、関節軟骨にも変性が多くみられます。また円板状半月損傷はほとんどが外側です。内側半月板と外側半月板との損傷頻度は、欧米では5~7:1と圧倒的に内側半月板損傷が多いのですが、日本では外側半月板損傷の発生が多く、これは日本では先天性の外側円板状半月が多いためと報告されています。最近では欧米と統計が似てきており、生活様式の洋風化と少しは関連している可能性があります。
膝をひねるようなあらゆる場面で起こりますが、ほとんどはスポーツ活動中に発生しています。ジャンプ着地などに際して膝関節が屈曲しつつ回旋(ひねり)が加わると、水平方向のストレスが加わります。そのストレスによって半月板を部分的もしくは全体的に損傷(断裂)します。例えば、片足で床を滑ったとき、横から膝にタックルされたとき、ジャンプ着地時に膝が外反屈曲してひねりが加わったとき、などに発生します。水泳の平泳ぎでも起こります。平泳ぎで起こるのは膝に繰り返しのひねりの力が加わるためであり、ランニングなどの単純な動作でも徐々に半月板が摩耗して起こります。
半月板を単独で損傷するよりもむしろ、前十字靱帯や内側側副靱帯の損傷を併発しやすく(約6割)、関節軟骨の損傷を伴うこともあり、注意を要します。また逆に、前十字靱帯単独損傷の後遺症で膝に緩みが生じ、それが誘因となって半月板を損傷するケースも多く見られます。

治療法…
保存療法としてどのような時期の患者さんに対しても大腿四頭筋強化訓練の効果が認められますが、嵌頓症状や関節水症を繰り返すような患者さんには漫然と継続すべきではありません。
手術療法としては、以前は半月板全切除術が行われていましたが、半月板欠損が変形性膝関節症の早期進行の主な原因となることが明らかになり、現在ではできるかぎり半月板を温存することが原則になってきています。そのため半月板切除術は縫合不能な小損傷または複合損傷、変性損傷、円板状半月板損傷などで行われるにすぎず、それもあくまでも部分切除です。また半月板の周辺部1/3には血行があるため、半月板縫合術が最近では積極的に行われるようになってきていますが、現在、適応を広げすぎている感じがします。当然のことながらよほどのことがないかぎりは、両手術とも関節鏡視下で行われるのが普通です。
多くは保存的治療で症状が軽快します。軽症であれば、装具やテーピングなどの補助補強、疼痛軽減目的でのリハビリテーションを行います。初期には局所の安静、関節穿刺〈せんし〉による関節液の吸引、局所麻酔剤やステロイド剤(消炎効果)の注入、最近ではヒアルロン酸注射(トピックス参照)を行います。また、筋萎縮予防や疼痛の軽減を目的として、大腿四頭筋、膝関節周囲の物理療法(低周波や干渉波による電気刺激)も実施します。
ロッキング症状、もしくは繰り返しの半月板損傷、持続する疼痛、しつこい水腫(膝に水がたまる)などがある場合に手術を行います(写真4)。最近では関節鏡視下(内視鏡)で半月板を切除したり、半月板辺縁部の断裂例では縫合術を行ったりします。半月板は血管分布が乏しいため、縫ってもくっつかないままの状態がほとんどです。手術して治るというのは厳密には正確ではなく、今の問題を軽減して、リハビリテーションなどを行ってうまくつきあっていく方法を見つけていきます。術後2~3週目より活動的なリハビリテーションを開始しますが、術後2ヵ月くらいは激しい運動は避けるべきです。スポーツの完全復帰は可能です。