前十字靱帯損傷

症状
受傷より3~6週間でほぼ通常の歩行や軽いスポーツ活動が可能となることもあります。しかし、靭帯が断裂してそのままにしておくと、「膝くずれ」と呼ばれる症状が出現することがあります。「膝くずれ」とは、ふいに膝を捻る様な動作をした際に体を支える事が出来ず、突然ガクッと膝が折れるような症状を言います。「膝くずれ」を放置し、スポーツ活動や日常生活を続けると膝半月板や関節軟骨が痛み変形性関節症になります。

原因
前十字靭帯は大腿に対して下腿が前方に移動する動きを制御する作用を有する靭帯です。前十字靭帯は、バスケットボールやバレーボールのジャンプ着地時に膝を捻ったり、アメリカンフットボールやサッカーなどでコンタクトプレー時に損傷がみられます。受傷時に『ブチッ』と音を感じる患者さんも少なくありません。当然、強い痛みのためのその後プレーを続ける事は、困難であり、前十字靭帯は関節内部にある靭帯のため断裂部からの出血は関節内にたまります。他にも膝を前方に引っ張った時に膝の「ゆるみ」を確認することが出来ます。

治療法…
前十字靭帯は一度断裂してしまうと特殊な条件が整わない限り自然につながることや、断裂部を縫合して治すことは出来ません。したがって、靭帯再建術(他の組織を使い手術的に靭帯を作り直すこと)を行うことになります。
ただ、この靭帯を損傷してしまった人すべてが手術を受ける必要があるわけではありません。手術をするかどうかは、「膝くずれ」の有無や程度、年齢、スポーツレベルによって決められますが、基本的には「膝くずれ」の有無に関わらず10~20歳代で競技レベル以上のスポーツを行う人は再建術が必要です。
再建方法には何種類かありますが、合併損傷がなければ手術後6~10ヶ月でスポーツ復帰が可能です。ただし「膝くずれ」が放置され関節軟骨の損傷がひどい場合は、スポーツ復帰はおろか再建術が出来ない事もあります。
また「膝くずれ」が起きず手術をしない場合でも、膝にゆるみがあるため知らず知らずの内に半月板や軟骨が傷んでくる事があるので専門医の定期的なチェックが必要です。
いずれにしても合併損傷の有無、スポーツ種目、レベル、年齢などにより治療の方法やスポーツ復帰への道も様々ですので適切な診断が重要になります。