頚椎椎間板ヘルニア

通常は腰痛やいわゆる「ぎっくり腰」のような症状が数日みられます。これに続いて片側のお尻や足へと放散する激しい痛みやシビレが生じます。この痛みは激烈なものが多く、運動麻痺が起こると足に力が入らず数日はほとんど満足に動けないことも多く、睡眠も妨げられるほどです。しかしながらこの痛みは2-3週間でピークを迎えることが多く、その後は放散する鈍痛がみられ、徐々にこれが薄らぐという経過をとります。典型的な場合には症状は一側下肢のみに限局しますが、時には両下肢が痛むことや、排尿排便障害、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などがみられることもあります。

原因
腰椎の椎間板は椎骨と椎骨の間にあってクッションのような役割をしています。椎間板は外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれるかなり軟らかい髄核とよばれる構造物から成り立っています。この椎間板のうち線維輪が弱くなって全体として膨隆したり、線維輪が断裂して中の髄核が脱出したりして、近傍にある神経を圧迫するようになったものが腰椎椎間板ヘルニアです。
腰椎椎間板ヘルニアは人口の1%程度に認められ、20~40歳代に多く、男性が女性より2~3倍多く、原因は、加齢的な変化に加え、軽微な捻挫や打撲、長時間一定の姿勢を強いる作業、スポーツ傷害などが誘因となって発生します。中には、重いものを持った際や「くしゃみ」などをきっかけに発症することもあります。

治療法…
安静を指示し、日常生活動作の注意点を指導します。活動時には装具療法としてコルセットを着用させます。リハビリテーションとして腰椎牽引療法や温熱療法・電気刺激療法を指示し、腰部のストレッチングや筋力強化訓練を指導します。難治例では神経ブロック療法を検討します。
しかし、これらの手術しない方法で改善の得られない症例は手術的治療を考慮します。手術適応は、耐え難い痛みを認める症例や直腸膀胱障害を認める症例、運動麻痺を認める症例などが対象となります。
近年、MRIの普及などによりヘルニアの病態が解明されつつあり、一部のヘルニアでは、自然に消退縮小することも解ってきました。従って、急を要する症例(運動麻痺や直腸膀胱障害を認める症例)以外は、3~6ヶ月間の保存的治療を行うように指導します。一般的に、腰椎椎間板ヘルニアの90%程度が保存的治療により軽快すると考えられています。